冷たい風にエモを感じたくて(10月27日の日記)

 最近、風が冷たい季節になってきた。ただでさえ気温も低く身体が冷えるのに、トドメを刺すように冷たい風が吹いてくる。地獄か。

 いつも昼食後、歯磨きをするために外の水道を使う。外にしか水道がないのだから仕方ない。身体を震わせながら歯磨きをしていると、追い討ちをかけてくるように冷たい風が僕目掛けて吹いてくるのだ。最悪である。

 

 しかし、ふとあることを思いついた。「風にエモを感じれば冷たい風も好きになれるのでは?」と。青春のエモやそういうのが好きだから、きっと風にエモを感じれば風も好きになれるはずである。早速、エモを考えてみよう。

 

夏の風

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 夏に吹く風は最高だ。気温が高い中吹いてくれる風は、一種のオアシスである。外にエアコンが設置されているわけが無いから、たまに吹いてくれる風が唯一涼しくしてくれる。しかも、かなりエモい。

 夏のエモと言えば大抵「一夏の思い出」だろう。出会いの形は様々だが、ひょんなことからある少女と出会い……そうして仲良くなり、楽しく過ごしているうちになんやかんや起こるのだ。最終的に主人公と少女は別れることになるが、別れる直前にキスをしたらさいっこうにエモい。呆然と突っ立ってる中、少女は笑顔で「それじゃあ、またね」と手を振って向こうへ去っていく情景がありありと思い浮かべられる。

 

 その情景には大抵風が付与される。麦わら帽子をかぶっていたり、白いスカートを着ている少女には風がよく似合う。麦わら帽子が飛ばされそうになって頭を押さえたり、スカートが捲れないように押さえたりする少女の姿は、間違いなく「エモ」だろう。これは間違いなくエモである。

 

 だが、冬の寒い風はあまりエモを感じられない。「冬」という季節自体、エモ要素が少ない気がするのだ。もちろん、冬にもエモは眠っている。雪遊びだったり卒業だったりと、要素だけで言えば「かなりエモ」な方に入るエモも存在する。しかし、どうも「夏」に比べると全体的なエモが劣っている気がしなくもない。

 

 個人的に感じる冬のエモは、ハルヒのストーブを買いに行く話だろうか。あれはまさに「エモ」を感じる。

 乾いた空気感に、全体的に暗めな雰囲気。楽しい日常も終わりが見え始め「別れ」を意識してしまう季節。寒さに震えながら歩く主人公の様子はまさに「エモ」以外の何物でもない。

 だが、現実でこのエモを感じるのはなかなか難しい。僕が高校三年生だったら、間違いなく寒い風も「エモ」認定していたと思う。あと数ヶ月で、この校舎とも友達とも会えなくなる。そう考えながら、身体を震わせて歯磨きをするのは完全に「エモ」だ。

 だけど、高校三年生になるまであと二年間も残っている。「終わり」までめちゃくちゃ遠い位置に立っているのだ。まだ感じることすらできない。

 

 今はただの苦痛でしかないこの風も、高校三年生になれば好きになれるのだろうか……